兵庫県図書館協会報 No.59(1998.12.1)
目次
  • 目・耳・心・手
    1. 雑感」神戸市立中央図書館 西山智子
    2. 「ろうそくの灯(あかり)に寄せて」芦屋市立図書館 丸尾恵子
    3. 「マンガでとしょかんだより」東浦町立図書館 野田真記子
    4. 「今、ここにいること」香寺町立図書館 中正良子
平成10年度協会第1回研究集会報告
情報発信基地としての図書館
―インターネットによる情報提供―
加古川市立図書館長 松尾洋一
 平成10年10月9日、加古川ウェルネスパーク図書館において、岐阜県図書館の土本潤氏を講師に招聘し、上記研究集会が開催された。県内各地より46名の参加があった。講演の要旨は次のとおりである。
 岐阜県図書館は平成7年7月に新館を開館し、開館と同時にパソコン通信による岐阜県教育情報ネットワークシステム(愛称スマイルネット)の運用を開始した。図書館と県内2か所にアクセスポイントを設けることにより、県内のどの市町村からでも1分10円で図書館の情報を見ることができるようになった。
 スマイルネットの端末は県内の市役所や図書館など310か所に設置されており、それぞれの施設とはINS回線で結ばれている。それにより60万件の図書館書誌情報などが検索でき、このシステムの開始により市町村の図書館等からの相互貸借利用が急増している。
 しかし、スマイルネットだけでは県民全てに情報を提供できないという難点があり、そこで平成8年10月にはインターネットに接続し、ホームページを開設した。
 その結果、県立図書館の蔵書検索、電子メールを利用したレファレンスサービスなどが24時間、家庭からでも可能になった。昨年の4月からは、県内の小・中学校622校や図書館等44か所の公共施設にもインターネットの端末機を設置し、無料で開放している。
 この2年間でホームページのアクセス件数は56,000件、検索は38,000件、電子メールによるレファレンスの件数は406件にのぼっている。また、距離を意識せずに国内だけでなく、世界中の図書館へのレファレンスも可能になった。
 なお、ホームページのメンテナンスは非常に手間のかかる作業であるが、書誌情報は週1回のバッチ処理でデータの更新を行っている。また、催し物などの更新については職員が行っているが、ボランティアに任せることも検討している。
 将来の計画としては郷土関係新聞記事のデータベース化や県域の総合目録の構築などを進めるとともに、図書予約システムの検索機能の充実も図りたいと考えている。
 最後に、インターネットが新聞・雑誌と違ったレファレンスの有効手段であり、また、情報発信の手段としても有効である。と講演を結ばれた。
 講義のあとインターネットの将来性や有効性、情報更新の方法等について多くの質問があり、関心の高さが伺えた。
 図書館へのインターネットの導入には、著作権や費用負担の問題など解決すべき課題があるが、図書館情報を提供するうえでは欠かせないツールになっている。それについての認識を深め、第1回研究集会を有意義に終えることができた。

目・耳・心・手
雑感」
神戸市立中央図書館 西山智子
 神戸市立図書館で働き始めてから早くも5年目になってしまいました。最初は垂水図書館で3年間、現在の整理係に異動になって今年で2年目です。
 利用者と直に接するカウンターと、図書館の裏方的な整理業務と、2つの面からこれまでを振り返ってみると、とにかくいつもいつも感じるのは月並みですが「相手の立場になって考えるのは難しい」ということです。
 カウンターでは、相手が聞きたがっているのは何だろう、あるいは同じ内容を説明するにしてもその人にとって一番いい言い方はどういう言い方だろうとよく考えました。現在は目録データの整備や電算システムの更新に関わる仕事をしていますが、今度は利用者だけでなく、窓口で実際に機械を使って業務を行う他の係の人たちにとっても使いやすい目録システムとは?と考えさせられます。
 日々何の気なしに過ごしているとつい、自分の立場を中心に物事を見てしまいますが、同時にいつも別の視点から物事を捉えられるようにしていたいと思っています。


「ろうそくの灯(あかり)に寄せて」
芦屋市立図書館 丸尾恵子
「このろうそくに灯がともったら、おはなしが始まります…。」
 土曜日、午後2時。図書館の利用がほぼピークに達する頃、定例行事の「こどもおはなしの会」は始まる。当館のおはなしの会は、小学校の低学年対象、高学年対象との2回にわけて開いている。すっかり顔なじみとなった常連さんや、調べものの合間に息抜きでやってくる中学生などその顔ぶれは様々だが、最近の傾向として参加者の低年齢化が目立つ。
 こどもの本についての知識はもちろん、おはなしにいたっては全くの白紙状態で児童担当となり、今年で8回目の秋をむかえた。慌ただしい業務の中、各研修・研究会を通しておはなしにふれ、自分が実際にこどもにおはなしを語る立場になって、ようやくその一端がわかりかけてきたような気がする。
 こどもたちにとっておはなしの中で起こる不思議な出来事は、単なるつくりごととしてではなく、心のどこか深いところで受け止められているように思う。こどもと本との出会いの場を広げ、「めにみえないもの」を感じる・信じられる心の余裕が持てるおはなしの会となるよう、私自身これからも成長し続けていきたい。
 聞き手であるこどもたちに助けてもらいながら…。

「マンガでとしょかんだより」
東浦町立図書館 野田真記子
「そろそろ図書館だよりを作ろう」
 昨年の11月、オープンしてからちょうど半年が過ぎた頃、職員の中でこんな声がでてくるようになりました。作るにあたり(子ども用と大人用の2種類を作ることは時間的に無理があったので)どんな年齢の人でも楽しんでもらう紙面づくりを心がけました。
 記念すべき第1号は新刊案内のような記事が中心でしたが、もっと図書館のしくみなども身近に感じてもらいたいと思い、第2号では請求記号のことを記事にしました。しかし、言葉で説明を書くと漢字ばかりの難しい記事になり、これでは読んでもらえないのではと不安になったので、マンガで説明することを思いついたのです。あまり詳しい説明はできないけれど、楽しい紙面ができあがりました。
 やがて、図書館のしくみだけではなく、日常のおかしな出来事を4こまマンガで表現したりするようにもなりました。何回か掲載しているうちに、ほんの数人ですが「ファンです」と言ってくれる人もできました。ネタ探しなどに苦労することもありますが、期待してくれる人がいるということが、うれしいプレッシャーになっています。

「今、ここにいること」
香寺町立図書館 中正良子
 2度目の育児休暇を終え、この9月に職場復帰しました。このたびの復帰は、私自身、仕事を続ける上でとても感慨深いものとなりました。というのも、育児休暇が私の療養休暇となってしまったからなのです。
 育休中の交通事故で右足を骨折し、3ヶ月間の入院生活。手術しても痛みが残りやすいと言われ、仕事も一度はあきらめかけました。母親としてもなさけなくて、これからのことを何も考えられない状態でした。
 でも、無事だった子どもたちの元気な姿になぐさめられ、職場の方にも励まされ、前向きになることができました。「9月までに…」という焦りと不安の中でリハビリに取り組み、何とか1ヶ月前にもとの生活に戻ることができたのです。
 久々に立つカウンターは新鮮です。書架の間を歩くのもなつかしく、今、ここにいられることの喜びを感じます。そして、たくさんの本たちにも「しっかりやれよ」と後押しされているような気さえしてくるのです。
老人ホームへの巡回サービス
西宮市立中央図書館 鎌井朱美
 西宮市では、「寿園」・「雅楽荘」・「一里山荘」・「ななくさ白寿荘」の4ヶ所の老人ホームに移動図書館が巡回しています。
「ななくさ白寿荘」は、介護が必要な方の施設なので、職員の方が代わりに利用されています。いつも予約用紙をたくさん持って帰られます。古典や医学書など難しい予約が出ますが、月に一回の巡回なので次回にはほとんどが用意できます。直接接することはできませんが、予約用紙を通して利用者の姿が少しみえるような気がします。
 他の施設は、直接借りに来られます。車が到着する前から玄関で待っていらっしゃいます。「この本面白かったわ。あんたも読み。」と友達や私たちにすすめたり、「これもう一回借りるわ」と継続の手続きをしたり、本を返却するテーブルのまわりはとてもにぎやかです。
「レース編みの本ないか?」と聞かれ顔をあげると、男の人が編み針と編みかけのテーブルセンターを持っておられます。「この人はプロやで。何回も入賞してんねんで。」と紹介されてびっくり。それから何度かレース編みの本を届けました。
 また、話ができないのでいつも筆談で本のことをたずねる方もいらっしゃいます。「この本予約したいねんけど、手が不自由で字が書かれへんねん。あんた書いて。」と新聞記事を持ってこられる方、「この本値段高いけど持って来てくれるやろか。」と全集を予約される方(県立図書館の本もたくさん読まれています)。皆さん読書意欲は満々で、巡回の度に老人パワー(というと叱られるかな)をいただいてきます。

稲美町の特色あるサービス
稲美町立図書館 橋本保
 平成4年11月のオープンから早いもので6周年を迎えようとしています。平成9年度末には蔵書数約7万3千冊に達し、年間貸出冊数約33万2千冊、開館以来の延べ貸出冊数は約141万4千冊となりました。
 この数字を見ると、図書館活動が軌道に乗ったようですが、住所の確認出来る書類があれば、県内外を問わず利用の登録が出来ることもその一因を担っていると思われます。
 特色あるサービスとしては、平成9年7月より体の不自由な方へ本などの宅配サービスを実施しています。これは少しでも多くの方に図書館を便利に利用していただきたい気持ちでスタートしたものです。活動の内容は、利用者から電話で希望の本のタイトルや希望の著者をリクエストしていただき、職員が利用者の自宅まで届けるということです。
 職員が訪問すると、本の予約・相談から世間話にまで話しが発展し、利用者とのコミュニケーションづくりにも役立っているようです。現在の登録者は11人ですが、もっと多くの利用を期待しています。
 また、平成9年11月から郷土ゆかりの人の著書を朗読ボランティアの方に音訳していただき、カセットテープを体の不自由な方および健常者にも貸出を始めています。今後はビデオテープも貸出ができるよう準備を進めているところです。
 誰もが気軽に利用でき、自宅にいるような安らぎを得られるような図書館活動をめざしていますので、たくさんの来館をお待ちしています。 

楽しいふれあいと小さな図書室
加古川市立図書館 東村ケイ子
 加古川市民病院小児科病棟のプレイルームが、毎月1回約1時間小さな図書室になります。図書館の児童室の担当職員が団体貸出で100冊の本を届け、入れ替えの時にお話会もするのです。
 病気などのために図書館に来られない子どもたちにもいろいろな本と出会う機会を提供し、お話しの楽しさを味わってほしいと願う図書館と、長期療養中の子どもたちに本を必要とする病院、双方の思いが具体的な形となり1989年1月から始まりました。
 訪問する時間は、看護婦さんや院内学級の先生と相談して午後2時30分から1時間程度と決め、その中で30分ほどお話会をしています。子どもたちの置かれている環境に配慮して選書し、お話しを選ぶよう心がけています。
 本はプレイルームの壁面書架に排架し、リクエストも積極的に受け付けています。また、子どもたちは本をいつでも手にすることができ、病室でも読めるようにしてあります。
 ろうそくの火を見つめながらじっと聞きいってくれるのは図書館のお話会も同じですが、点滴をしながら、車イスでといった光景も見られます。限られた生活空間、単調な時間などさまざまな制約を受けている子どもたちに点字図書や録音図書、大活字本などそれぞれの状況に応じたきめ細やかなサービスを心がけ、月1回のわずかな時間をこれからも持ち続けたいと思います。
 そしてこの子どもたちが、お話会や時々行う人形劇の印象を心に刻んで元気に退院し、図書館へ足を運んでくれることを願っています。

☆図書館の仲間紹介☆
 神戸ファッション美術館
 平成9年春に六甲アイランドに公立としてはおそらく全国初のファッション専門図書館として開館しました。「ファッション美術館」という総称のもと、ミュージアム部門とリソースセンター部門からなる複合施設の一つでもあり、公共図書館というよりは美術図書室に近いイメージがあります。閲覧室は、ダーク・トーンの木製書架やフローリングに、間接照明を用いて落ち着いた空間を演出しています。館外貸出しサービスを行っていないため、こうした空間は、閲覧室で腰をすえて調査・研究をする利用者の方々には好評を頂いています。肝心の資料ですが、主題であるファッションについては、19世紀からの文献・バックナンバーなど、近・現代の資料を媒体を問わず所蔵しています。その他関連分野として、衣食住に関する資料、写真、美術、映画に関する和・洋書などを収集しています。 
 現在の蔵書数は、和・洋書約24,000冊、カレント雑誌が約380タイトル、映画やファッションショー等の映像資料やポップス・ロックを中心としたCD等のAV資料が約1万点、CD-ROM約500点のほか、寄託資料としてスライド資料やファッションブランドのカタログなど約4万6千点の資料があります。その中には一般の書店では取り扱っていない資料もあります。特にファッションの先端を走る情報系の資料や、海外のタウン誌などにそういうものが多いので、専門図書館の常として、情報や資料の収集は最も気をつかうところです。
 情報システムについては、神戸市図書館ネットワークシステムと独自の画像検索システムを使用しています。利用者は操作の簡単な端末機で検索できます。
 利用者は老若男女様々ですが、若い世代が比較的多く、お洒落な若者が目立ちます。人気は、種々の海外雑誌とAV資料で、特に豊富な映画ソフトと、パリやミラノ等のファッション・ショーのビデオがよく利用されています。
 この他、美術史やモード等についての各種セミナーや映画上映会などの催事を定期的に開催しています。
(司書 鈴木美緒)

協会からお知らせ
平成11年度大会等の開催予定
○全国図書館大会 滋賀県大津市・草津市 10月27〜29日「図書館ルネサンス・滋賀」
○日本図書館協会公共図書館部会全国研究集会
 ・奉仕部門 担当:愛媛県
 ・整理部門 担当:大阪府 11月18〜19日(予定)
 ・移動・協力事業分科会 担当:神奈川県
○近畿公共図書館協議会研究集会
 ・奉仕部門 担当:神戸市
 ・参考部門 担当:京都市
 ・児童部門 担当:滋賀県
 ・地区別研究協議会 担当:大阪市

既設図書館でも活用できる補助金
○学習活動支援設備整備事業(文部省・県教育委員会社会教育・文化財課)
対象: 公民館は施設規模2,000u以上、公立図書館は図書館法の補助用件を満たすもの
内容: 情報検索用コンピュータ・大型プロジェクター・映像展示システム・点訳本作成機拡大読書機・移動図書館車等の整備(含据付工事費)
金額: 最低500万円
○地域社会教育活動総合事業(文部省・県教育委員会社会教育・文化財課)
内容: 巡回文庫用自動車、点字図書、大型活字本、字幕入りビデオ等の整備
○障害者等生活環境基盤整備事業(厚生省・県健康福祉部町づくり担当課)
内容: 障害者や高齢者の日常生活に不可欠なアクセスを確保するため、利用頻度の高い既存の公共施設の改造・改善を行う(図書館も含まれる)
○公共図書館充実事業(県総務部市町振興課理財係)
内容: 公共図書館充実のための図書・ビデオ等の整備