兵庫県図書館協会報 No.63(2000.3.1)
目次
  • 目・耳・心・手

    1. 「開館準備雑感」 佐用町企画振興室 萩野範子
    2. 「利用統計から思うこと」 社町立中央図書館 松井 敏
    3. 「大型貸本屋からの脱却」 浜坂町立加藤文太郎記念図書館 西ア 昌
    4. 「ひとりひとりが"代表"」 尼崎市立中央図書館 橋本千恵子
    5. 「学校訪問」−小中学校との連携− 新宮町立図書館 大西和美

特別寄稿「こども読書年」が打ち上げ花火と終わらないことを願う。
鴨の子文庫 大月ルリ子
 今年が「子ども読書年」と制定されたのは、ひとつには待望の国立国際子ども図書館が今年5月遂に開館の運びとなるのに合わせてと思われます。しかしそれだけでなく、電子メディア万能の時代における人間性の危機が誰の目にも明らかになってきており、人間性回復の手段としての読書が特に人間形成期にある子どもにとって大切であることが多くの人の心に認識されてきたことの現れではないかとも考えられます。
 これまで日本になかった国立規模での児童図書館の誕生はそれ自体大層よろこばしいことです。ただ、今この時代となっては、一国の子どもの本及び資料を集め供するだけでは足りなくなってきており、アジアの一員としての我が国の位置を自覚し、地球規模での情報交換及び協力・援助を視野に入れて「国際」という言葉が頭についたことは意味深くもあり、またその使命の重層性に、出発点から大変大きな仕事をこなしていかなければならない重責を感じさせられます。
 洋の東西を問わず図書館というものは最初はひとりの個人が、自分に楽しみや喜び、恩恵をもたらした本を、自分以外の人々にも使ってもらいたいと願ってつくられたものでした。紀元前七世紀のアッシュルバンパル王の図書館も我が国八世紀の石上宅嗣の芸亭も、各国各地の公共図書館の前身となったものもひとつとしてそうでないものはありません。至近の身近な人々に充分効果的に使われるようにといろいろ工夫をこらし、分類法その他が編み出され図書館の仕事が確立していきました。こうして直接身近な人々に充分楽しんでもらえるものとなった上で、その時空を超えてひとの心に呼びかける本の特質ゆえに、図書館の機能は広く遠くまた長きにわたって数知れぬ人々にまで及ぼされるものとなっていきました。
 この最初の段階を経ることなくはじめから広く遠くその機能を及ぼそうとしても、経験によってつちかわれたものに支えられることのない仕事は砂上の楼閣
となる恐れがあり、それを認識して新しい国際子ども図書館も、コンピュータを駆使しての情報提供、資料交換、調査・研究援助等の他に、子どもに対する直接サービスにも力を入れるときいています。
 さて「子ども読書年」といわれても、せいぜい子どもの本や読書にまつわる行事や催しを企画するぐらいしか思いつかないのではないかと思われますが、その後に続く日々がもっと重要な意味をもつと思います。行事はきっかけをつくる意味では有効かもしれませんが、今や読書という行為は動機づけをすればすむというものではなくなってきているからです。"ことばによる喜びの体験"が子どもの生活の中で稀薄になっている現在、子どもは活字から五感のともなった体験を感じとることができなくなっているからです。
 電算化に励んできた日本の図書館もここらで今一度立ち止まり、図書館の原点にもどり、"ことばを通して喜びを分かち合う"本の存在と、それを楽しんでもらうためにある図書館という場を見つめ直してほしいと願います。
 図書館へ行けば面白い本に出会える、読んでもらったりお話をきかせてもらって楽しい体験ができる、即ちことばを通して喜びの体験ができるということが保障されなければならないでしょう。図書館員はその実現に向けて研鑚を積み、日々の仕事を通して子ども達と心を開き合い、本の中にある喜びを分かち合うようになってほしいものです。そうなったとき、子どもにとって毎年が「子ども読書年」となり、その生活を"ことばによる体験"が豊かに喜びに満ちたものとしていくことになるでしょう。
目・耳・心・手
「開館準備雑感」
佐用町企画振興室 萩野範子
 佐用町では平成13年春をめざして、図書館の開館準備を行っています。現在選書作業中ですが、経験の浅さ、力量不足は如何ともしがたく、担当の上司や近隣の図書館、また県立図書館の方々にご心配とご迷惑をかけつつ夢中で取り組んでいます。
 町にはじめてできる図書館ですので、利用者像が見えにくいことが、選書をするにしても何をするにしても一番不安なところです。結局ちょっと手堅いくらいの基本的な蔵書で開けて、あとは利用者と棚を作っていくしかないのではないかと思います。そうは言っても、少しでも利用者の読書傾向などを具体的に知るため、町内の公民館図書室や書店、近隣の図書館で人と本の動きを継続的に観察して、感覚的につかんでいく必要性を感じています。
 「棚で人を幸せにしたい」と、とある書店のご主人。読書はとても個人的な行為で、だからこそ深くて意味のある体験なのだと思いますが、それをきちんと踏まえた上でこの言葉が実現できるなら、わたしはそういう仕事をめざしたいと思っています。

「利用統計から思うこと」
社町立中央図書館 松井 敏
 社町立中央図書館は平成5年7月に開館し、今年で7年目を迎えました。開館以来の来館者数は昨年末累計で731,334人、個人貸出冊数は1,107,118冊となりました。
 また、昨年1年間に中央図書館へお越しになった方々は125,970人、貸出冊数は236,754冊です。前年比較で来館者数は10.9%、貸出冊数では27.3%の増加となり、開館以来の高利用率となりました。
 これまでの6年間は、社町立図書館の基礎づくりの期間であったと思います。「くらしに生きる図書館」「地域に生きる図書館」としての礎が定着した感があります。
 これから先の時代がどうなるかは予測できませんが、記念すべき2000年を契機に、この数値を心の糧として、住民の中にしっかりと根を張り、いざというときに頼りにされる図書館でありたいと考えています。図書館は資料の収集、提供にあたって重い責任を課せられているわけですから…。
 今後とも日本で認められる優秀な図書館としてより一層のご支援をお願いします。

「大型貸本屋からの脱却」
浜坂町立加藤文太郎記念図書館 西ア 昌
 町民から声を掛けられたとき、「図書館にも一度おいでくださいよ」と必ず言うようにしている。すると、「いやあ、敷居が高くってねえ」と一様に言われる。
 図書館という場所が、たとえば学校なみのなんとなく堅いイメージで受け止められるらしく、なかなか一般町民に広げるのが難しい。居住域が広く交通が不便だったりするのでBMも備えているが、これも利用は多くない。
 郷土出身の登山家加藤文太郎を顕彰し、その資料館を併設して発足してから5年、図書資料も徐々に整い一応体裁は整ってきた。一部町民の生活には確実に定着し、固定的な愛好者には重宝がられている。
 けれども、広く一般町民に愛されるには、この堅いイメージをなんとしても払拭しなければ、今一段の飛躍は望めない。そのために、図書館は本を貸し出すところという概念を打ち破るような、従来にもまして斬新なイベントをつくりあげて、一般町民に足を運ばせるような魅力ある図書館づくりが必要な段階になってきたと思っている。

「ひとりひとりが"代表"」
尼崎市立中央図書館 橋本千恵子
 図書館で働いていていつも感じること、それは自分の実力を仕事に反映しやすいということです。もちろん一組織としてさまざまな制約もありますが、個人の裁量にまかされている範囲は広いと思います。
 私はレファレンスを担当していますが、これまでの経験から得た知識やカンを頼りに図書館中を探し回り、やっとぴったりの本を「発見」して、利用者の方に喜んでいただいたときの充実感はなんともいえないものです。
 また、図書館だよりも担当していますが、読んで下さる利用者の姿を思い浮かべながら原稿を書くのはとても楽しい。ネタ探しに苦労しつつも出来上がった作品は、毎号が私の宝物です。
 個人の裁量による部分が大きいということは、それだけそれぞれの持つ責任も重いということ。カウンターでの一個人の対応が、図書館全体のイメージにつながることもあります。「自分が図書館を代表している」という緊張感と誇りと、そして笑顔を忘れずに、毎日の仕事をこなしていきたいと考えています。

「学校訪問」−小中学校との連携−
新宮町立図書館 大西和美
 当館は1991年に開館し、1993年からは小中学校で授業の一環としておはなし・ブックトークなど共に貸出しを行う「学校訪問」をしています。
 町域が約100kuと広く、校区外にある図書館へは自分たちだけで来ることのできない子どもと本を結びつけるきっかけとして始めました。
 隣接する小学校を除いた5校(36全学級)と中学校1校へ年間2回ほどずつ、おはなしやブックトークをする職員が、紹介する本と貸出用の本約500冊を車に積んで出かけます。
 車が着くと、生徒たちが本を貸出し用の教室へ運ぶのを手伝ってくれたり、どんな本があるかと集まってきます。いよいよ授業時間になり、おはなしやブックトークをします。やはり紹介した本は多くの貸出しがあるので、できるだけ複本を用意して行っています。
 内容がいいのに装丁が地味だったり、分厚くて普段手に取りにくい本でも、その楽しさを伝えると子どもたちは本を読みます。友達同士で本の内容を紹介して薦めあったり、先生が子どものころに読んだ本の話に聞き入ったりと、本を読む楽しさが広がって行くのを目の当たりにします。
 一年生担任の先生が自分も一緒に絵本の読み聞かせを聞いて、「まだまだ絵の助けがいる年なんですね、勉強になりました」とおっしゃったり、また、生徒の借りた本から思わぬ一面を発見されることもあるようです。
 悲しいことに新宮町にはBMが走っていません。まず出来ることからと考えて始めた学校訪問ですが、町内の多くの子どもに顔を覚えてもらい、中高生になってからも来館時にはよく相談を受けることを考えると、そのつながりは意味深いものに思えます。
平成11年度兵庫県図書館協会第2回研究集会報告
情報発信基地としての図書館−インターネットによる情報提供−
三田市立図書館 辻野 登
 平成11年12月10日(金)、三田市立図書館において精華町立図書館長・澤田種治氏を迎え、標記研究集会を開催した。京都府相楽郡4町の図書館情報ネットワークシステムを踏まえてのお話しに関心も高く、参加者は45人であった。講演の概要は次のとおり。
 (1)はじめに 精華町には関西文化学術研究都市があり、その中心地に国立国会図書館関西館が建設中である。精華町は学研都市で開発中のギガビットネットワークへも参加しており、情報化への取り組みが進んでいる。
 (2)4町立図書館の連携 京都府相楽郡の加茂町・木津町・精華町・山城町の4町立図書館は、平成9年8月から「広域個人貸出制度」を開始、書誌情報を共有するための仕組みづくりが課題となっていた。
 (3)郵政省の委託事業 平成10年度に郵政省の「広域的地域情報通信ネットワーク整備促進モデル構築事業」が始まった。これは複数の地方公共団体が連携して情報通信ネットワークの整備を行うモデル事業で、4町では総額5,000万円で受託した。
 (4)システムの概要 このシステムは「統合型データベースシステム」で、4町の異なる図書館システムを相互に接続し、別々のMARCで管理されている書誌情報を共通フォーマットに変換して蓄積・共有し、準リアルタイムで貸出状況が確認できる。
 (5)システムの効果と課題 インターネットを利用した図書の検索は図書館はもちろんのこと、各家庭等からの利用も増えている。本の予約処理についてもサービス向上と事務効率の向上が期待されている。
 課題としては、システムの運用管理の態勢やデータが一杯になったときの対応、相互貸借資料の搬送システムの整備等がある。
 (6)図書館の情報サービス 図書館にとってインターネットは大変便利なツールである。読書案内やリクエストサービスのための書誌検索に役立ち、大手の取次や出版社のホームページからは発注もできる。また、レファレンスにもうまく使えば大変有用である。ただ、情報の信頼性に問題があるものもあるので注意が必要。
 図書館は地域の情報拠点として、電子化された情報を含めた幅広い情報を提供するとともに、住民の情報活用能力の育成を支援することも今後重要な役割となる。
 耳慣れない専門用語もでる講演であったが、参加者一同図書館におけるインターネットの重要性について認識できた研修となった。
☆図書館の仲間紹介☆ 
(財)阪神・淡路大震災記念協会資料室
 (財)阪神・淡路大震災記念協会は、平成9年12月に兵庫県並びに神戸市はじめ被災10市10町が共同で設立した財団法人です。
 当協会では、阪神・淡路大震災からの復旧・復興状況や震災から得られたさまざまな教訓を踏まえ、人類の安全と共生に係る総合的な調査研究や、阪神・淡路大震災に係る既存情報の収集整理・保存などの事業を行っていますが、こうした事業の一環として、震災資料の収集、整理、保存を行っており、収集した資料を協会資料室において一般公開しています。
 一般公開資料の内訳は、書籍、冊子、地図、新聞、ビデオ、カセットテープ、CD、CD−ROM、写真、ポスターなどで、一部は有償で購入していますが、大部分は寄贈を受けたものです。公開資料の収集件数は平成12年1月末現在で17,514件に及んでおり、アメリカ合衆国ほか海外で発行された阪神・淡路大震災関連資料なども収集しています。
 このほか、避難所や仮設住宅などから収集したボランティア情報、体験記、感想文、ビラ、チラシ、ノート、メモ類などのいわゆる一次資料についてもボランティアグループ等から寄贈や寄託を受けており、今後順次整理を行って公開していきたいと考えています。
 さらに、当協会では阪神・淡路大震災に関する貴重な報道映像や市民のホームビデオによる映像などをデジタル化し、編集した震災映像アーカイブを作成しており、これらの作品についても資料室において閲覧することができます。
 資料室はJR神戸駅前のクリスタルタワー11階にあり、毎週月曜日から金曜日までの10〜12時及び13〜17時にご利用いただけます。閲覧机(2脚)で自由に閲覧できますが、資料の貸出及びコピーサービスは行っておりません。
(調査第1部主任研究員 下村恒雄)
◎(財)阪神・淡路大震災記念協会資料室
〒650-0044 神戸市中央区東川崎町1-1-3 神戸クリスタルタワー11階
TEL 078‐361-5115 FAX 078‐366-0605
URL :http://www.hanshin-awaji.or.jp/
「震災関連資料目録」の発行
神戸市立中央図書館 松永憲明
 当館では、これまでに約2,500タイトルの震災関連資料を収集し、「神戸ふるさと文庫」内に「1.17文庫」コーナーを設け図書資料を配架している。
 収集資料については、毎年1月に簡単な資料リストを作成してきたが、震災から5年を経過し、ひとつの区切りとして『震災関連資料目録』を発行した。
 目録の特長は、従来の書名・分類索引に新たにキーワード索引を付け加え、震災関連資料によく著述される語句からの検索を可能とした。また、雑誌や論文集の記事や論文についても図書と共通の主題分類を行った。キーワードは「基本件名標目表」を参考にしたが、震災関連資料に頻出する語や、利用者からの問い合わせの多い語句についても広く取り上げた。震災の調査研究者の資料検索に役立つことを期待したい。
 今後は、他の震災関連資料収集機関と連携し、一般保存雑誌に収録されている記事・論文等の索引作成や、インターネットを活用した震災関連情報の発信を積極的に行いたい。
◎『神戸市立中央図書館所蔵震災関連資料目録』神戸市立中央図書館編・刊 2000.1 8,352p 30cm
「フェニックス・ライブラリー」
兵庫県立図書館 溝口めぐみ
 兵庫県立図書館では阪神・淡路大震災の記録・資料を後世に伝えるために、大震災に関する資料の収集に努めており、郷土資料室内に震災関連資料コーナー「フェニックス・ライブラリー」を設けている。
 現在、一般刊行図書・雑誌・県内外新聞・被災地広報・パンフレット・ビラ・チラシ・ミニコミ誌・ボランティア情報・避難所だより・手記・文集・地図・空中写真・ビデオ・スライド・CD−ROM・録音テープ・マイクロフィルムを所蔵して一般に公開している。
 雑誌については記事索引データベースを作成し、パンフレット・ビラ・チラシ類についてはデジタル保存をめざして作業を行っている(公開は未定)。
 平成11年12月末現在で震災関連資料の総件数は約1万点に達しているが、まだまだ網羅的とは言い難い。今後とも皆様のご理解とご協力をお願いしたい。