兵庫県図書館協会報 No.68(2001.10.1)
目次
兵庫県図書館協会創立70周年をお祝いして
(社)日本図書館協会顧問 前理事長 栗原均
 新しい世紀の初めの年、兵庫県図書館協会創立70周年を迎えられる(人でいえば"古希"の祝い)ことをお慶び申し上げ、同時にこのことは、新しい県下の公共図書館創造の出発時点にあることを意味していることと存じます。
 貴協会発足の1931(昭和6)年11月といえば、その直前に満州事変の勃発(9月)、図書館界では第25回全国図書館大会(10月・金沢)で文部大臣諮問「図書館ノ附帯事業トシテ適当ナル社会教育施設如何」があり、その後の"図書館における社会教育論争"の出発点となった時代であります。近代日本政治と近代公共図書館論の転機の年でありました。このことと共に戦後1949(昭和24)年協会再建後を含めた70年の歴史をあらためて顧みることは意義あることと考えます。
 兵庫県で生まれ育った私は、隣接の大阪府で長く図書館の仕事を続けたこともあって、兵庫県内の図書館と優れた多くの図書館職員の方々から大きな刺激を受け、支援と協力をいただいてまいりました。
 @昭和30年頃、大阪府立図書館自動車文庫の新車設計に当り、当時の兵庫県社会教育巡回文庫車"文鳥号"を訪ねたこと。A戦後早くから志智嘉九郎神戸市立図書館長の指導で進められていた新しい参考業務の内容と方法が、その後の日本のレファレンスサービスを形造る運動の実践ともなり、これに県外の一人として参加できたこと。B1974年のわが国最後の県立図書館の創設に際し、新図書館のサービスと資料の検討委員として参画したことなどを顧みることができます。
 さらに、C10年前の貴協会60周年記念行事にお招きを受けた当時のまことに温かい交流の雰囲気に協会活性化の原点を見、お世話になった関係者を思い起こしております。"図書館法50周年の式典では、法制定当時を知る自分が是非お話しをしたい"とおっしゃっておられた志智嘉九郎先生は既に鬼籍に入られてしまいました。D1995年の阪神・淡路大震災直後に大きな被害を受けた各館をお見舞いしたとき、その生々しい現場のなかで真摯に復旧と図書館活動再開に努力されていた職員の姿が蘇えってまいります。
 震災による極めて大きな打撃にも拘わらず、兵庫県下の公共図書館界はここ10数年にわたって、各自治体行政と図書館職員の努力によって、住民の図書館に寄せる強い期待と要望に応えるべく、新図書館の設置と飛躍的なサービス向上を実現しております。特に町立図書館の新しい活動は全国的に注目されているところです。協会再発足直後の1950年に公・私立17館であった県内公共図書館が今日では80館近くに増加し、その拡がりは今後も続くことが期待されています。この要因が貴図書館協会の各種事業を踏まえたリーダーシップと、県立図書館による積極的な県内各館への支援協力活動にあったことは疑いありません。
 貴協会会員各館の今後一層の交流促進によって、新時代の県全域にわたる公共図書館発展にむすびつく協会創立70周年記念となりますよう祈念しております。

「阪神はひとつ」の思い高く
−阪神7市1町の広域貸出−
元尼崎市立中央図書館長 藤原英一郎
 阪図協長年の宿願であった「阪神7市1町の住民であればどこの図書館でも貸出」という広域貸出が実施されたのは平成3年です。敢えて長年の宿願と申し上げるのは、昭和40年代半ばには広域貸出の構想があり、検討されていたとの記録が残されているからです。
 20数年経て実施をみたわけですが、この背景には、行政の生涯学習に対する姿勢や、当時阪神間で新設開館や移転新築など図書館整備が相次いだこと、さらには、阪神広域行政圏協議会が事業の一環として図書館の広域サービスを取り上げるなど、気運の盛り上がりがありました。
 とはいえ、当初からすべて順調に進んだわけではありません。実施までの検討は約2年を要し、数十回の会議を重ねましたが、途中、会議の中断も止むなき場面もありました。例えば、「利用者が片寄り不公平ではないか」「今でも利用者が多いのに、この上他市町の住民を受入れられない」等々。互いに理解し合い、共通の認識をみるには止む得ないことでもありました。
 しかし、阪図協は「阪神はひとつ」そして「広域貸出を実現したい」という思いを持ち続けてきました。これは阪図協が長年にわたって培った財産でした。
 制度面からひとつ付記すれば、今後いかなる社会的事情があろうとも変わることなきよう、協定は首長協定として形態を整えたことに特徴があります。これは正に、図書館行政において「阪神はひとつ」であることを約したものでした。
 あれから10年、今ではすっかり市町民に定着しました。阪図協の広域貸出が他市町にも取り入れられればと願っています。

なつかしのブラリアンの会
元芦屋市立図書館長 鬼丸貞彦
 図書館に入ったのが昭和27年で、芦屋市では、新しい図書館法の公布により、市民の中から要望があり開設されたばかりでした。当時の職員数は6人ほどで、家族的雰囲気ではありましたが、問題点を話し合うといったことはあまりなされない面がありました。
 私自身も他館の実情等を知らないため、館内での議論だけではどうにもならない面もあり、そんなところから、比較的交通の便もよかった阪神四市の研究会づくりが西宮市の萩原氏等の呼びかけでなされました。研究会といっても親睦を主としたもので、閉館後どこかの館に集まり、カレーや焼き飯を一緒に食べながら自然発生的に各館の現状や困っていることなどを、自由で気楽にしゃべり合うといった会でした。
 それで会報はライブラリアンをもじった「ブラリアン」の名で、ガリ版刷りながら、職員の紹介や業務改善等の報告がなされていました。
 おしゃべりの中からヒントを得られるだけでなく、その中で培われた人間的なつながりが強く、会そのものは公的な会に変わっていきますが、現在の阪神間の図書館協力体制にもつながっていったものといえます。
 なお、兵図協の組織や運営の改善にも参加させてもらいましたが、協会報については、各館の状況報告だけでなく、できるだけ各館の一人ひとりの職員の仕事や人柄を知り合えるような場にしたいということで、現在の形で発行がなされるようになったと記憶しています。

私の図書館人生
元赤穂市立図書館長 飯田 義輝
 昭和30年代前半、私は都立日比谷図書館に勤務していたが、新装なったばかりの館には大勢の来館者が殺到し、その外には延々長蛇の列が並んで、一人出てくると一人が入館するというシステムになっていた。冷暖房のきいた当時としては贅沢な施設だったと思う。来館者は学生がほとんどを占めていた。
 そのころ、都内の日野市では、図書館という建物はなく移動図書館車で市内を巡回して廻るという前代未聞の処方で全国から注目を集めた。これは日本の図書館行政に新しい時代の幕開けを促す象徴だった。
 その後、赤穂市に帰った私は、設立準備室時代を含めて約25年に亘り図書館業務に専念してきた。このころから特に公共図書館の在り方が大きく変わりつつあった。開架制にして市民が直接本に接するようにし、貸出方法も登録もできる限り簡易になるよう工夫改善されていった。その結果、貸出冊数の急激な増加、利用者層の広がり(幼児から高齢者まで)が顕著になってきた。市民と図書館の距離が急速に小さくなったことは確実に証明されるようになった。
 同じころ、兵庫県立図書館は全国都道府県のうち最後の県立図書館として登場し、「図書館の図書館」として脚光を浴びた。つまり県内の各種図書館をバックアップする図書館として出発したのである。IT時代のこれから、インターネットによる情報の交換などが一層活発化し期待されるようになることであろう。

新しい総合目録にそなえて
元神戸市立図書館 稲本吉次
 戦後、兵庫県図書館協会が取り組んだ総合目録は、私の記憶によれば、つぎの3点である。
 1.兵庫県公共図書館所蔵 郷土資料総合目録 昭和36年3月刊
 2.全国公共図書館 逐次刊行物総合目録 第1巻 近畿編 昭和38年4月刊
 3.兵庫県公共図書館所蔵 郷土資料総合目録 昭和57年3月刊
 そのほかに、協会各館が兵庫県立図書館に協力してできた「兵庫県公共図書館 雑誌・紀要等総合目録 兵庫県立図書館編・発行 昭和60年2月刊」がある。
 これら総合目録が、図書館サービスの向上に果たした役割は計り知れない。そしていま、郷土資料、逐次刊行物の双方とともに改訂新版が渇望されている。
 さて現在、新しい総合目録が、冊子目録であろうとその他の形態をとるにしても、その編成のために電算の利用を抜きに考えられないだろう。ところで、電算データについて、いささか心もとないものがある。たとえば、ある館の「神戸市史」の所蔵表示が書誌的に混乱している。また、所蔵されているにもかかわらずいろいろ検索手段を講じなければヒットしないものや、カード目録では記述されていたであろうセットものの内容が省かれているところなどもある。
 親切で質的にも高い新しい総合目録のためには、現データの総点検が必要であるように思う。

坂井名誉館長に仕えて
元兵庫県立図書館 長谷川時男
 昭和57年4月のこと、当時の坂井時忠知事が名誉館長になられ、以後専任館長は置かないと聞き、初めてのことで驚きました。
 4月早々知事が名誉館長として来館され、次長をはじめとして各課長が館の運営状況につきご説明申し上げました。そのとき知事が話されたことで記憶に鮮明なのは、「戦前内務省で金井前知事と出版物の検閲業務を共にした。どちらかというと私は書物好きだから、金井前知事に美術館に行ってもらって、私は図書館をみることにした」という言葉です。知事勇退後は専任で館長をなさるご予定だな、と私はとっさにそう思いました。
 名誉館長は現職知事のため、本務多忙の合間をぬって来館され、図書館業務に対する熱意の深さを示されました。当時の石田次長は実質的に館長代理をされていただけに、館の運営全般につき絶えず名誉館長に報告され、またそのお考えをお聞きするなどを心掛けられ、たいへんご苦労なさったことを思い出します。
 名誉館長の指示で外国の文化や生活が一目でわかるビデオライブラリーの設置、図書館近くの住民との交流を深めるボランティア制度の確立や中庭の改装など多くの足跡を残すことができました。
 石田次長も私も昭和60年4月に転出しましたが、予想どおり、知事勇退後の坂井時忠さんが専任図書館長に就任され、平成2年1月にお亡くなりになるまで職をまっとうされたことは皆さまご承知のとおりです。

図書館への熱い思い
−さらなる前進を−
洲本市立図書館 協議会委員 野村純弘
 終戦直後の1945年に学校図書室の開設準備に関わったことがある。新任一年目の私は先輩教師と共に、十進分類法や閲覧カードの整理に悪戦苦闘した。また、手作り教材での性教育など、生徒たちが生き生きと学習した実に愉快な思い出もある。
 家庭の事情で教職を5年で退職し、自営業の傍ら文化活動などをしていたとき、図書館協議会の委員に推薦された。今年で26年になるが、当時は資料費が少なくて委員会ではいつも不満が絶えなかった。
 1985年に東京から一人の青年が帰郷して近代的な図書館設置への学習会「図書館を考える会」を結成し、11月には前川恒雄先生の講演会を文化協会、図書館との三者で共催した。私は先生の講演をきいて感動して図書館運動に関わることを決意し、93年には「新しい図書館をつくる会」の事務局長に就任した。
 その後、新図書館建設を公約した現市長が当選、官民一体のビジョン委員会が生まれ、半年で答申を提出した。初視察の滋賀県の八日市市立図書館で西田博志館長の話を延々3時間、昼飯も忘れて聞いたことが委員間で今でも語り草になっている。 
 1998年9月に開館して4年目を迎えるが、ボランティアが各種の活動をしており、毎年の図書館市民まつりには2日間で5千人以上の参加がある。
 今も図書館のカウンターには、第16回日本図書館協会建築賞のレリーフや全国表彰を祝う市民の会からの花束が飾られている。利用者がじっと眺めている情景を見ると、さらに前進しなければと心新たに思う。

兵庫県図書館協会のさらなる発展を願って
滋賀県公共図書館協議会会長・草津市立図書館長 井上眞澄
 昭和6年に発足した兵庫県図書館協会が、本年度、創立70周年を迎えられ、この間、図書館に関する調査研究及び広報活動、研修会、研究集会、講演会等の開催、会報及び図書館に関する刊行等さまざまな事業を兵庫県下の図書館発展のために展開されてきたことに対し、敬意を表する次第でございます。
 兵庫県図書館協会と比較しますと、滋賀県公共図書館協議会は歴史も浅いのですが、滋賀県下の図書館事業の充実発展を図ることを目的として昭和55年に発足いたしました。
 当時、滋賀県下の図書館は市立2館、町立3館、私立2館のみで、全国水準から大きく立ち遅れておりましたが、現在滋賀県下50自治対中、39の自治体に図書館が設置され、3自治体で建設計画が進められております。
 このような滋賀県下の図書館状況を迎えましたのも、昭和56年度からスタートした「滋賀県図書館振興策」によるところが大きいと考えられます。
 この間、滋賀県公共図書館協議会も、図書館活動の振興をめざし、職員研修、図書館活動に関する調査研究、県の図書館振興策の検討、県への要望活動をおこなってきました。こうして県内図書館の共通の基盤づくりに努めることによって、県下の図書館が住民に親しまれ、利用される一定水準以上の図書館になるよう、また未設置自治体の解消の一助になったものと自負しております。
 兵庫県下では、22市24町に図書館が設置され、町立図書館の設置率は36%ということでございますが、兵庫県図書館協会が、取り組まねばならない最大の課題は、「未設置自治体の解消」であると思われます。
 どの自治体も財政状況が厳しい折ではありますが、兵庫県図書館協会が「未設置自治体の解消」にご尽力いただき、「全ての県民が図書館サービスを受けられるように」ご尽力いただくことを願っております。

11月1日より来館者への貸出を開始
兵庫県立図書館
 兵庫県立図書館では、昭和49年10月に全国最後の県立図書館として開館して以来、県内各市町立図書館への協力・支援とレファレンスサービス、資料の保存を運営の基本方針としてきましたが、多様化する県民のニーズにより迅速に応えるため、平成13年11月1日(木)より来館者への貸出を実施することとなりました。利用登録は10月20日(土)から受け付けます。
<貸出の概要>
(1)対 象 県内在住・在勤・在学の方
(2)貸出冊数 7冊以内
(3)貸出期間 3週間以内
(4)利用登録 資料を借りるときには利用カードが必要です。住所、氏名を確認できる証明書類(健康保険証、運転免許証、学生証等)を添えて窓口で利用登録すると利用カードを発行します。
(5)返却方法 @開館時間内にカウンターへ返却
A休館日、閉館時は玄関横の「返却ポスト」へ
B郵送による返却(送料は利用者負担)
(6)貸出できない資料 基本参考図書、年鑑・年報、郷土資料のほか「利用規則第10条に規定する資料(@小冊子、新聞、雑誌、マイクロフィルム、レコード及びビデオテープ、A寄託資料で館外貸出を制限されたもの、B特に損傷し、又は滅失しやすい図書館資料)」は貸出できません。
 なお、市町立図書館等に対する協力貸出は従前どおり変更はありませんのでご利用ください。

協会からお知らせ
平成14年度大会等の開催予定
○IFLA第68回 グラスゴー(スコットランド国) 2002年8月18〜24日
○第88回全国図書館大会 群馬大会 10月23〜25日 
○全国公共図書館研究集会
 ・整理部門 9月19・20日 秋田県秋田市
 ・奉仕部門 10月17・18日 埼玉県さいたま市
 ・参考事務分科会 10月10・11日 三重県津市
 ・児童図書館分科会 11月14・15日 熊本県熊本市
○近畿公共図書館協議会研究集会  担当:和歌山県立 時期未定
○文部省地区別研修会  担当:大阪府立中央図書館 時期未定

平成13年度全国公共図書館奉仕部門研究集会・近畿公共図書館協議会児童奉仕部門研究集会
 研究主題: 21世紀をひらく図書館サービス
 期   日: 平成13年10月18日(木)〜19日(金)
 会   場: シーサイドホテル舞子ビラ神戸
 全国から多くの図書館関係者をお迎えします。多大のご協力をいただき、ありがとうございました。