兵庫県図書館協会報 No.76 (2004.8.1)
目次
「阪神・淡路大震災の教訓は生かされたか」
神戸市立中央図書館長 伊川一男
☆新規加入館紹介☆
「生活のなかの図書館をめざして」中町図書館長 片岡政子
☆伊丹市にふたつめの分館がオープン!☆
「ようこそ図書館北分館へ」伊丹市立図書館北分館長 小野信江
平成15年度兵庫県図書館協会第2回研究集会報告
「現代ヤングアダルト事情」に参加して
平成15年度兵庫県大学図書館協議会研究会報告
「大学図書館の地域開放と館種を越えた相互協力ネットワーク構築の可能性」
協会からのお知らせ

「阪神・淡路大震災の教訓は生かされたか」 神戸市立中央図書館長 伊川一男

月日の経つのは早いもので、震災からもう10年になろうとしている。かつて経験したこともない未曾有の大災害に、神戸のまちは壊滅的な被害を受けた。激しい揺れにより、一瞬にして家屋が倒壊し多数の死傷者が発生。 それに火災が追い討ちをかけ、道路、鉄道、ライフラインなどの都市基盤も崩壊し、市民生活は大混乱に陥った。

いま、神戸のまちは震災の傷跡もほとんど無くなり、被害の大きかった地域にも新しい住宅や店舗が建ち並び、見違えるように復興している。同時に私たちの心の中からも震災の記憶の風化は進んでおり、一抹の不安を覚えるのは私一人だろうか。

私の机の上に当時の活動記録をまとめた「阪神・淡路大震災 被害状況復旧活動記録集 神戸市立中央図書館」という小冊子がある。

概観すると、図書館は建物、設備などに大きな被害を受けており、特に大正10年建設の中央図書館の旧館は半壊の状況で、その後解体、建て替えがなされている。設備関係では、幸いコンピューターシステムは軽微な被害であったが、電動集密書架に大きな損傷を受けていた。職員も被災者となり、通勤の足となる交通機関もすべて途絶するなど、すぐに出動可能な状況にはなく、発生当日17日の中央図書館職員46名中出動できたのは14名となっている。わずかな職員で中央館や地域館の被害状況の把握や職員の安否確認に忙殺されている。19日からは可能なところから、散乱した図書の回収や転倒した書架の建て直しなど復旧作業を開始し、20日には始めての臨時の館内管理職連絡会を開き、被災状況の確認、復旧活動の検討に入っている。一方、市の対策本部からは各職場に対し、避難所の運営支援や救援物資の搬入・搬出などの応援出動の指令が発せられ図書館職員も動員されている。2月5日からは厳しい環境のなかで避難所生活を送る子どもたちを励ますため、市内の避難所へ紙芝居やお話しキャ ラバン隊を巡回させている。あわせて全国から寄贈された12万冊にのぼる図書を活用して避難所に配本し、読書に親しんでいただいた。震災による被害は図書館の直接的な被害のみでなく、市民への貸出図書の紛失が3,579冊、貸出券の紛失が1,830件発生した。

震災後早期の再開が望まれ、4月28日から順次再開されたが、一部の図書館は避難所やボランティアセンターとして開放されたため、市内全館オープンは年末の12月12日までかかっている。また応急復旧が一段落した7月には、震災記録を後世に伝えていくことを目的に、関係者に対し震災資料の寄贈依頼を出している。これらの資料は現在約3千点に のぼり中央図書館の閲覧室の一角に「1.17文庫 阪神・淡路大震災関連資料コーナー」として一般の利用に供している。

いま、突然襲ってくる地震災害のほか、テロや大規模火災など都市災害に対する備え、危機管理の重要性が大きく叫ばれている。図書館においても日頃の活動の中で、利用者のトラブルや窃盗、置き引き、高齢者などの急病人、館内事故など緊急時の備えが必要である。このような危機に対峙していくためには緊急時の対応マニュアルの整備や訓練が欠かせないが、何よりも業務に従事する職員の心の中に常に危機管理意識を醸成していくことが必要である。また自然災害は避けられないが、事前に十分な準備をすることで被害の軽減を図ることは可能である。利用者の安全を第一に、建物の耐震化や書架の転倒防止、緊急時の速やかな情報の共有化、被災者の避難誘導のほか、懐中電灯やラジオ、救急医薬品、ヘルメットなどの準備は欠かせない。

震災10年を機に、もう一度震災の教訓がどのように生かされているか検証してみたいものである。
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☆新規加入館紹介☆

生活のなかの図書館をめざして 中町図書館長 片岡政子

3月1日中町図書館がオープンしました。以前、結婚式場として使われていたコミュニティーセンターを改装し、施設のほぼ半分が図書館となっています。住民アンケートなどで図書館を望む声は多く、新館建設の気運が高まりました。しかし、公共施設整備のための地総債事業廃止などにより、既存施設の改装というかたちで図書館を始めることになりました。蔵書規模6万冊、床面積562u、視聴覚資料なしの小規模な図書館。天井にはシャンデリア、床にはバラの花の絨毯が残ったままですが、書架に本が納まると温かく親しみやすい雰囲気になりました。入ってすぐ右手が児童コーナー、正面奥が参考図書コーナー、左手が一般コーナー、参考図書コーナー隣のかつて控え室だった和室がおはなしの部屋となっています。現在の蔵書は約4万5千冊、小説、実用書、児童書などを中心に充実を図っているところです。
職員は館長以下4名。オープン前からの配架ボランティアや読み聞かせボランティアなど、多くの方に支えていただいています。
小さな町の小さな図書館。まだまだ利用者の方のご期待に応えられていませんが、今後たくさんの方の声を聞きながら、毎日の暮らしの中で身近に使っていただける図書館を目指していきたいと思います。
開館時間 10:00 〜 18:00
休館日 月曜日・火曜日・祝日(第3のみ日曜日と翌月曜日)
所在地 〒679-1133 多可郡中町糀屋434-11
Tel 0795-32-5170
Fax 0795-32-5171
ホームページ http://www.library.naka.hyogo.jp
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☆伊丹市にふたつめの分館がオープン!☆

ようこそ図書館北分館へ 伊丹市立図書館北分館長 小野信江

伊丹市立図書館北分館は、市の北部に新たに建築された複合施設(愛称:きららホール)内にあり、4月4日にオープンしました。
きららホールは図書館、北部学習センター(公民館・児童館機能を持った施設)、支所の3施設で構成されています。北部学習センターは、市で初めて指定管理者制度を導入しました。北分館は、その指定管理者(NPO法人)に一部委託をしています。
北分館の蔵書は約4万冊で、AVコーナーやお話しコーナー、対面朗読室があります。オープンを待ち望 んでいた子どもからお年寄りまで、多くの方々が利用しています。
今後さらに、複合施設の利点を生かし、生涯学習の北部拠点として地域の人々の学習意欲に的確に応えられる図書館を目指していきます。南から明るい陽光が降りそそぐ中、生活の一部として地域に根ざした北分館であるとともに、日々成長する図書館でありたいと 考えています。
開館時間 9:30 〜 19:00(土・日・祝日・休日は17:00まで)
休館日 水曜日、毎月末日(12月は28日)
所在地 〒664-0007 伊丹市北野4丁目30番地
Tel 072-770-9500
Fax 072-770-7708
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平成15年度兵庫県図書館協会第2回研究集会報告

「現代ヤングアダルト事情」に参加して

本の探偵・子どもの本の研究家として名高い赤木かん子氏に、YA世代を中心とした図書館サービスのあり方について、実践に基づいた講演をしていただきました。以下、講演の内容を報告します。
これまで作られているYAコーナーで成功している例は少ない。コーナーも必ず設置しなければならないものではないが、YAに対するサービスは必要である。しかし、中学校が2校しかないような地域では、学校の図書室にYA向けの書架を置くほうが効果的な場合もあるので、地域の実情に沿った対応が必要である。
以前は、中学・高校生を指してYAといっていたが、最近では大人になりきれない大人が増えており、YAの範囲も10歳から35歳くらいまでに拡大している。そのため、YAもジュニアとシニアに区別してそれぞれの対応を考える必要が生じている。
これからの公共図書館のYAコーナーの構成は従来の価値観を転換し、YA世代が利用しやすいような選書を考える必要がある。「図書館員が読ませたい本」ではなく、「利用者が読みたい本」を揃え、提供すること も求められている。読みたいという気持ちにさせる本 が必ずしも文学的価値のある本とは限らない。読みた い本を利用者自身に選んでもらうことも必要。また、出版当時の読者層と、出版後10〜20年たった現在とでは社会環境も変化している。人は一つ前の世代のことが一番古臭く感じられるという傾向があり、当時と同じ年齢の読者が同じ本を読むことには無理がある。このような読者層のズレを修正するために、書架の構成や分類は従来のような固定的なものではなく、利用に合わせて流動的にすることが考えられないか。また、絵本のコーナーに育児書や育児関係の雑誌を置くことも一つの方法ではないか。公共図書館の利用者のほとんどはアマチュアであり、アマチュアの読みたい本を提供できる技術が図書館職員には求められている。
これからの公共図書館は、市民の生活を支えるため の知識や情報を提供し、図書館員も地域や町の発展に貢献できるようサービスのノウハウを絶えず学び、工夫し、実践していかなければならない、と話された。
(姫路市立城内図書館 谷口 智恵
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平成15年度兵庫県大学図書館協議会研究会報告

「大学図書館の地域開放と館種を越えた相互協力ネットワーク構築の可能性」

平成15年10月24日、関西学院大学図書館において標記テーマにより、県下の40大学、15公共図書館から83名が参加して開催された。
目録の開放に伴い、利用者の要求が公共図書館の蔵書だけでなく、大学図書館の蔵書の利用への要求も増加してきている。このような状況のなかで、このたび初めて県下の公共図書館が多く参加し、大学図書館と公共図書館が情報交換や連携・協力を考えていくための貴重な機会となった。今後の図書館活動にとって非常に参考になる会であったのでここに掲載したい。
まず報告として、兵庫県立図書館の出井雅子氏が、兵庫県立図書館が県内大学図書館に対して実施したアンケートをもとに、大学図書館と公共図書館との相互貸借の実施状況や他府県の連携協力体制など「県下大学図書館と公共図書館の相互協力について」の発表があった。
次に、大学図書館と公共図書館が同じコンピュータシステムを利用している「神戸市図書館情報ネットワークの現状と課題」について神戸市立中央図書館の長谷川雄彦氏が報告した。
大学図書館側からは、「専門図書館と大学図書館と の相互協力―薬学図書館協議会の活動を通して―」と題して、神戸薬科大学の木口敏子氏が電子ジャーナルコンソーシアムの活動など専門図書館との活発な交流について紹介した。
最後に、神戸学院大学の鴻上浩智氏から「大学図書館の市民への開放について」の報告で、神戸学院大学での実施状況などから、大学図書館の市民への開放が広まってきている状況がわかった。
質疑応答に先立ち、各報告者からの補足に続き、神 戸大学附属図書館から国立大学法人化に向けての取組と今後の展望についてと、関西学院大学図書館から三田および西宮市立図書館との相互協力についての報告があった。
質疑応答に移ってからは、主に公共図書館から大学図書館に対して相互協力の現状について質問や確認が行われた。公共図書館と大学図書館の相互の認識のギャップをいかに埋めていくか。それにはまずこのような交流の機会が必要だと感じた。これからの相互協力の活性化に向けていろいろな意味で刺激となった。
(神戸市立中央図書館 長谷川 雄彦
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協会からのお知らせ
全公図・兵図協からの表彰
○平成16年度全国公共図書館協議会表彰(敬称略)
三好正一、白瀧香魚子(以上神戸)、 登智恵子(高砂)、豊田千代子(県立)
○平成16年度兵庫県図書館協会表彰(敬称略)
宮本明子、高橋一郎(以上神戸)、末広雅彦、六倉秀樹、前川雅昭(以上芦屋)、堀千佐、岡村由佳子(以上姫路)
平成16年度の役員紹介
会長 芦田弘逸(県立)
副会長 板東和司(県立)、伊川一男(神戸)、大島秀一(西宮)、堀田忠良(加古川)
理事 芦田弘逸(県立)、伊川一男(神戸)、大島秀一(西宮)、川原隆男(尼崎)、
堀田忠良(加古川)、石井靖彦(明石)、 宮下 博(姫路)、杉岡和弘(香寺)、
青山忠勝(和田山)、近藤任弘(洲本)、長澤一正(篠山)、足立忠尚(県議会)
監事 河南文夫(伊丹)、前田武弘(赤穂)
平成16年度予算 総額 1,355,463円
―予算の内訳―(主な項目)
通信連絡費 70,000円
研究集会費 160,000円
消耗品費 60,000円
会報発行費 100,000円
会議費 20,000円
表彰費 70,000円
総会費 30,000円
事業特別会計費 100,000円
調査・情報活動費 240,000円
全国公共図書館分担金 50,000円
予備費 455,463円
加入館等の紹介
○新規加入館
中町図書館(新設、既存施設の改築)、安富町立図書館(新設)
○その他
伊丹市立図書館北分館(新設)
平成16年度大会等の開催予定
○IFLA第70回ブエノスアイレス大会
「教育と発展の手段としての図書館:World Library Information congress 2004とアルゼンチンの図書館について」8月22〜27日
○全国図書館大会(第90回)  香川県高松市 
「瀬戸内の風にのせて、未来へ発信 〜情報の
 泉・図書館を考える〜」   10月27~29日 
○全国公共図書館研究集会
・サービス部門  岩手県盛岡市 10月7~8日
「図書館サービスの未来を語ろう 〜チャレンジ!できることからはじめてみよう〜」
・総合・経営部門 鹿児島県鹿児島市 1月27~28 
・児童・青少年部門 福井県福井市 11月25~26
○近畿公共図書館協議会研究集会
担当:大阪市立図書館
今後の研究集会の予定(県内)
○文科省・図書館地区別研修(近畿地区)
日程:平成17年2月1〜4日
会場:明石市内
担当:兵庫県立図書館
○ 兵庫県図書館協会研究集会
担当:宝塚市立図書館
担当:加古川市立図書館
「絵本ワールド in ひょうご」のお知らせ 
開催日時 平成16年11月6日(土)〜7日(日)
開催場所 原田の森ギャラリー(王子動物園前)(神戸市灘区原田通3-8-30)
主な内容 ・講演会・トークショー・ワークショップ(読み聞かせ・紙芝居・人形劇)
・子どもの本(絵本)展示、即売会・協賛社展示ブースなど
◇ 兵庫県図書館協会として運営に参画し、協力・応援していきます。
兵庫県図書館協会報 no.76 平成16年8月1日
編集・発行:兵庫県図書館協会
〒673‐8533 明石市明石公園1‐27  兵庫県立図書館内
Tel 078-918-3366 Fax 078-913-9229
E-mail: hyotokyo@library.pref.hyogo.jp
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