兵庫県図書館協会報 No.78 (2005.2.1)
目次
「図書館が変われば町が変わる」丹波市立図書館長  勝川 浩幸
目・耳・心・手
○「ふと感じるしあわせ」津名町立図書館 森 和子
○「図書館職員になってうれしかったこ」明石市立西部図書館 名古 みすず
○「楽しみの分かちあい」太子町立図書館 馬澄 理奈
○「利用者の笑顔が原動力」川西市立中央図書館  辻原 由香里
☆第90回全国図書館大会報告☆
「瀬戸内の風にのせて、未来へ発信−情報の泉・図書館を考える−」
☆全国公共図書館研究集会 サービス部門☆
「図書館サービスの未来を語ろう−チャレンジ!できることからはじめてみよう−」
☆全国公共図書館研究集会 児童・青少年部門☆
「一人一人の子どもに読書のよろこびを」
「台風23号被害に遭遇して」
豊岡市立図書館長 佐久間 文孝
協会からのお知らせ

「図書館が変われば町が変わる」 丹波市立図書館長  勝川 浩幸

丹波市立図書館が誕生した。といっても、昨年11月の丹波市発足に伴い、これまで氷上郡内6町にあった図書館・図書室の名称が変わったにすぎない。

各町の図書館は、床面積、蔵書冊数、資料購入費等々、何においても格差が大きすぎた。私は合併を機に、各町の図書館がある程度充実され、その後合併することを願っていた。しかしそれはほとんど叶わなかった。

これまで資料の貸出は、町内在住在勤者に限られていた。合併し「市」が誕生すれば、市民は市内のどの図書館でも利用できるが、そのための作業は大変だった。図書館システムを統一しなければならない。3館で資料バーコードのコード体系が同じであったために、すべてのバーコードの貼り直しをしなければならなかった。請求記号は、6館とも異なっていたために統一しなければならない。利用者カードもすべて共通のものに作り変えなければならない。できあがった新しい利用者カードは、職員が残業して封筒に入れ、各家庭に郵送した。この作業があと3日も続けば倒れていたかもしれない、というのが職員の偽りのない感想だった。この一連の作業を3月末日までに完了させた。

その後、図書館資料データや利用者データの新システムへの移行、移行後の不具合の調整と作業は続いた。町内在住在勤者に限られていた資料の貸出が、相当の費用と労力をかけて市内のどの図書館でも可能になったことは合併に伴う大きな改善である。しかしそれだけでは、図書館の充実ということとはほど遠い。

言うまでもなく図書館は、情報センター・生涯学習の拠点として、幼児から高齢者に至るまで、多くの市民に日常的に利用される施設である。丹波市の人口は74,000人だが、面積は約493kuあり、県内では神戸市に次ぐ広さである。その上、交通の便も大変悪く、移動は自家用車に頼るしか方法がない。幼児、高齢者のことを思えば市の中央に大きな図書館が一つあればよい、というものではない。小学校区に分室あるいは配本所でも1館あれば理想だが、それは今の財政事情からとても無理だとしても、とりあえずは中学校区に1館ある図書館を充実させなければならない。

図書館の充実とは、まず図書館員として力量のある「人」の配置である。次に「資料」の充実である。ところが今、1館に臨時職員1人、新聞・雑誌さえ置いていない施設がある。これと大差ない施設もある。すべて丹波市立図書館である。これを図書館としてどう機能させればよいのか。

図書館の充実が、地域づくり人づくりに貢献するところは大きい。しかし、図書館を利用した経験もなく、「図書館は無料貸本屋」ぐらいに思っている人に、この話を理解していただくのは大変である。合併前、視察に見えて、「合併すればこれ(現中央図書館)が一つあればよいなあ」と言われて、「図書館はそんなものではないんです」と、説明するのに何度口を酸っぱくしたことだろう。しかし、図書館が変われば町が変わる。間違いなく変わる。理想とする図書館への道は遠いが頑張らなければならない。

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目・耳・心・手
「ふと感じるしあわせ」 津名町立図書館 森 和子
「おはよう、今日も来ましたよ」「元気そうやね」と声をかけてくれる顔なじみの人。カウンターでは「この本良かったわ」「少し遅れてごめんね」と本の貸出に加え、ちょっとコミュニケーション。不思議なもので、毎日来られている方の顔をしばらく見ないと、何かあったのかと心配になる。

「おばちゃん、僕何読んだらええねん?」と何度も聞きに来たり、児童室で騒いでいる時、「あんたら、静かにしようよ!」とよく注意をしていた小学三年生の男の子が、1年後には「今日はこの本借りるわ」と自分で本を選べるようになると共に、友達が騒いでいた時、「静かにせーよ!」と注意をしている。子どもが図書館を通じて本の楽しみを知り、マナーを身につけてくれることは、図書館員としてとても嬉しい。

図書館に勤めて11年。図書館は本の利用だけではなく、子どもからお年寄りまでの交流の場、憩いの場、癒しの場、そして躾の場であると感じられる時が、私にとって秘かな喜びである。

「図書館職員になってうれしかったこと」 明石市立西部図書館 名古 みすず
図書館勤務になって早4年。明石市立図書館に配属され、図書館業務になんの知識もなかった私が、仕事をしてこられたのは、研修委員として2年間お世話になったおかげと感謝しています。

もともと読書は好きでしたが、最近は、忙しさにかまけてほとんど1冊を読破できませんでした。たくさんの本に囲まれているのに読まなくてはと思っているこの頃です。

専門知識もないのに、レファレンスをし、もっぱら利用者の方といっしょに書架の本を探すという形でした。それでも目的の本が提供できた時は、本当     に嬉しく思いました。帰宅途中、本を探していた利用者の方からお礼を言われた時もありました。3年間勤めた本館では、文学、実用書を、西部館では児童書の担当になり、おはなし会を経験し、毎日が勉強です。

余談ですが、中学生の息子が2年連続で将棋の県大会出場を果たせたのは、図書館で借りた本が役立ったのだ、と親ばかで思っています。

「楽しみの分かちあい」 太子町立図書館 馬澄 理奈
「何かおもしろい本ない?」とよく聞かれる。そう感じる内容は人によって違うだろう。冒険もの、ファンタジー、歴史小説など、好みが千差万別だ。私の好みは、描写が丁寧で読むのに時間はかかっても、読後に静かな温かい感動が残る本だ。

図書館の多くの蔵書の中で、個人が読めるのはそのうちの数パーセントにすぎない。その中で、自分がおもしろかったと思える本は何十冊かにしぼられる。さらに、選んだ一冊を人に薦め、「これ、おもしろかった!」と言ってもらえた瞬間、それが私にとって一番うれしい時。その人と好みが重なった、楽しみを共有できたと思えるからだ。

小さい頃から、あまり人と話すのが得意ではなかった。毎日、人と触れあい、言葉をかわすことができるようになり、その上、楽しみを分かち合うことができるとは、なんと幸せなことだろう。それも、小さな赤ちゃんからお年寄りまで。その根底には、「みんな本が好き」という確かな信頼がある。

「利用者の笑顔が原動力」 川西市立中央図書館  辻原 由香里
カウンターで利用者と接するのは、もちろん緊張もするが、ある意味でとても楽しい。

駅前の商業ビル内という立地条件からか、我が職場はとても賑やかだ。買い物ついでにちょっと寄ってみた雰囲気の家族連れ、必死の形相でレポートの資料を探す学生さん、重くて持って帰れないからと、大事そうに1冊の文庫本を借りて帰る年輩の方、通路に座り込んで絵本に熱中している幼児、読んだ本の名前がびっしり埋まった読書ノートを見せてくれる常連さん…。カウンターからでも様々な人生が見える。

月並みだけれど、いろいろな人と出会い、様々な質問を受けて、利用者が求めるものにぴったり合った回答ができたときに見せてくれる笑顔を見ると、とても嬉しい。この嬉しさが、次も頑張ろうという原動力になっているのだな、としみじみ思う。

でもやはり一番嬉しいのは、大好きな本の海に一日中浸っていられること……かもしれない。

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☆第90回全国図書館大会報告☆

「瀬戸内の風にのせて、未来へ発信−情報の泉・図書館を考える−」

「図書館をめぐる情勢が様々に変化し、多様なサービスが求められる中、図書館が人々の必要とする情報を提供する機関として、豊かな情報の泉でありつづけるためにはどうするべきなのか」。10月27日から29日の3日間、香川県高松市において、全国から1,600人以上の参加者を迎え、図書館大会が開催されました。

私自身は13の分科会が開催された2日目から参加させていただきました。

「本好きな子どもを育てるために」というテーマで開催された第7分科会(児童・青少年サービス)では、全国の自治体における「子ども読書活動推進計画」の策定状況についての報告の後、佐々木宏子氏が「ストーリーが子どもに運ぶもの」というテーマで基調講演をされました。実践のビデオを含め、子どもがことばを獲得し、読書にかかわっていく過程を知ることができ、とてもわかりやすい講演でした。午後からの3つの事例発表は、「読書活動推進計画(大阪府)」「ティーンズサービス(東村山市)」「ブックスタート(高松市)」と、加古川市ではこれから取り組んでいかなければいけないことばかりで、参考になることが多かったです。  

最終日は「子どもの読書活動の推進−ふたたび読書の世界へ」というテーマで、シンポジウムがありました。出版社、NPO、文部科学省の3人のパネラーが、それぞれの立場でお話をされましたが、いかに子どもたちに読書の楽しみを知ってもらうかという共通のテーマで、活発な意見交換がされました。読書活動推進法が制定、公布され、推進計画策定が進む中、積極的に子どもの読書活動に取り組んでいる自治体と、そうでない自治体の格差がますます広がってきています。すべての子どもが豊かな読書体験ができるよう、早急に環境整備をしないといけないと感じました。また、子どもたちと本を結びつけるために、図書館や私たち職員のかかわりが重要なことを再認識しました。

図書館をめぐる情勢は、管理運営の多様化、市町村合併など、急激に変化しています。図書館に求められることも、時代とともに変化しています。様々なニーズに対応できるよう、状況を敏感に感じ取り、すべての人に親しまれる図書館を目指して努力していかなければいけないと痛感しました。
(加古川総合文化センター図書館 松岡 由美)

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☆全国公共図書館研究集会 サービス部門☆

「図書館サービスの未来を語ろう−チャレンジ!できることからはじめてみよう−」

平成16年10月7日・8日の2日間、岩手県盛岡市において全国から約240名が参加し、開催されました。図書館の今日的課題を踏まえた上、これからの図書館サービスを考えるという趣旨で、基調講演・事例発表・情勢報告・全体協議が行われました。

基調講演では、図書館の原点は利用対象と取り扱う資料、双方の「無限定性」にあり、そこには大きな可能性があるという発表がありました。しかし、今日の図書館は、予算の減少をはじめ、危機的状況にあると言わざるをえません。重要なのは、図書館の経営戦略です。利用対象の重点をシフトする、PR活動を検討するなどして、「役立つ図書館」への脱皮を図る必要があります。今こそ図書館長並びに図書館職員は、専門性を深めると共に「政治的視点」を持つべきだ、との提言がありました。

事例発表では、ビジネス支援・高齢者サービス・児童サービスの事例について、それぞれ発表がありました。

情勢報告では、委託化の進行に伴った、図書館の運営形態の多様化についての報告がありました。複数の方式を十分に吟味し、適切な運営形態を模索してほしいとのことでした。

図書館は対象とするお客様を限定しない。そこには、多様なサービスを展開できるという可能性があるのです。しかしそれは、裏を返せば、公的機関でありながらより民間に近い立場、常に「選ばれる立場」にあるということです。日常業務の中ではとかく忘れがちな、「戦略的」・「政治的」視点はとても参考になりました。

また、現在、図書館の開館日・開館時間は増加傾向にあります。これは、働く大人たちをターゲットとして重要視するようになったからでしょう。ここで問題となるのが、人員の確保です。ある程度の委託化は避けて通れない。しかし、司書が一人もいない、民間の会社が経営する図書館には疑問を感じるのです。そのような図書館が増加すれば、司書という資格の存在意義を問われることになります。アピールできるだけの専門性と、民間にもできないような質の高い丁寧なサービスを目指して努力していきたいと考えています。
(姫路市立図書館東光分館 高田 麻依子)

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全国公共図書館研究集会 児童・青少年部門

「一人一人の子どもに読書のよろこびを」

「今、子どもの本にできること」と題した清水眞砂子氏の基調講演は、普段大学で接している学生たちの具体的なエピソードや時事に、サトクリフやカニグズバーグ、『トミーが三歳になった日』などの児童文学作品を織り込んだ、示唆に富んだものでした。

午後は「一人一人に届ける」(ブックスタート、障害児への絵本の読みきかせ)、「学校図書館を考える」、そして私が参加した「蔵書を築く」の3つの分科会がもたれました。児童サービスの先進地の浦安市も、資料1冊1冊を図書館が責任を持って選び、問題が起きた時には前向きに取り組むという業務の積み重ねの中で蔵書を築かれてきたということでした。所蔵資料についても機会があるごとに検討しなおし、何事も担当者だけでなく、職場の共通理解とすることが大切だということを再認識しました。個人的には、銀座教文館の土屋氏の発表を楽しみにしていました。過去一年間に出版された児童書を一覧できるコーナーを持ち、図書館等の選書の援助となるようなユニークな事業を展開している、私のお気に入りの書店だったからです。選書の参考にも使っている質の高いメールマガジンが、厳しい労働状況の中でも、新刊全点を読み込む中で生まれているというお話には頭が下がりました。図書館では「試しに借りてみたら?」ということができますが、お金を払うとなると、安価なものであったとしてもお客さんはシビアです。「今まで手を抜いてきたつもりはなかったのですが、公務員の甘さを思い知らされました。」との分科会の助言者の発言に共感を覚えた人は多かったと思います。

交流会では、福井市内の図書館の方に台風の時の話を聞きました。水に追われながら最下段の本を棚の上に上げ、何とか本の被害は免れたものの、11月の時点でまだ閉館中。バリアフリーということで、外との高低差をなくした建物であったため、あっという間に水が入ってきてしまったというお話には考えさせられました。

日図協の中多氏の「あなた達はパイオニアです。楽でないのは当たり前です。」という言葉に片身が狭くなったりもしましたが、先輩方のご活躍は、目先の業務に追われがちな、日常を振り返るよい機会になりました。   
(宝塚市立中央図書館 加藤 りか)

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「台風23号被害に遭遇して」 豊岡市立図書館長 佐久間 文孝

10月20日から当地方を襲った台風23号では、豊岡市をはじめ多くの市町が甚大な被害をこうむりました。被災されたみなさまに心からお見舞い申し上げますとともに、お見舞い・激励をいただきました図書館関係のみなさまに厚くお礼申し上げます。

幸いにも図書館自体は浸水等の大きな被害はありませんでしたが、利用者に貸出中の図書資料等の一部が、家屋の浸水により汚損したり、避難や片付けの際に紛失するという被害が発生しました。

今回の台風災害に対し、図書館ではまず、交通事情や被災世帯の事情等を考慮し、貸出期限を延長する措置を講じ、防災無線等を通じて広報を行いました。

引き続き、片付けやごみ処理等が進む中で、水災等による汚損図書の返却と紛失図書の届出を依頼し、これらについて弁償義務を免除する措置を講じました。

現在は、子どもたちの心のケアに少しでも役立てられるよう、従来から推進している読み聞かせの意義を積極的にPRし実践するとともに、学校などに対し、必要に応じて図書の団体貸出を実施しています。

図書館ボランティアにも大きな被害を受けた方が多数ありましたが、幸いにも献身的な協力を得て、少しずつではありますが、前向きに進みつつあります。

4月の合併を控え、まだまだ課題は多いのですが、みなさまのご支援を得ながら、市民に喜ばれる図書館を目指して頑張っていきたいと思っています。

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協会からのお知らせ
今後の研究集会の予定

○兵庫県図書館協会第2回研究集会
日程 平成17年2月23日
会場 加古川総合文化センター
テーマ 「図書館と危機管理について」
講師 草津町立図書館司書 中沢孝之氏

絵本ワールド in ひょうご2004

11月6・7日、昨年に引き続き神戸市灘区の「原田の森ギャラリー」で絵本ワールドが開催された。兵庫県での開催は今年で3回目を迎え、2日間で昨年より1,000人多い10,200人の参加者が楽しんだ。

編集・発行:兵庫県図書館協会
〒673‐8533 明石市明石公園1‐27  兵庫県立図書館内
Tel 078-918-3366 Fax 078-913-9229
E-mail: hyotokyo@library.pref.hyogo.jp
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